TAOP ”直感” 紙の作品 モエレ沼公園 ガラスのピラミッド
アーティスト・トーク要約
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一輪車ダンサー 岡部莉奈さんによる パフォーマンス
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
アンドレ・クルーセンによるTAOPの説明
2013年にレイモンド・ケホパーズとジェルーン・ホフィズンによって設立。直感を大切にしている国際的な作家の集団。
加藤義夫先生の紹介
アーティストの紹介:笠見康大・高田研二郎・中村眞弥子・アンドレ クルーセン
加藤:日本とオランダの関わりは長崎の出島に遡る。オランダの絵画の歴史を振り返る。レンブラント、フェルメール、ゴッホ、モンドリアン。
日本人は知性を使った作品よりも、自然との関係性を描くアーティストが多い。
どのようにこのグループが結成されたのか?
アンドレ:TAOPは 脳よりも直感を使った表現に興味を持っている。グループの代表のレイモンドは、もともとプロのサッカー選手。スポーツとアートには、考える前から身体が動いていることがあるという、共通の“直感”が働いている。ボールを蹴るという動作は、思考の前に始まっている。絵を描くときも、思考の前に筆を握る手が動いている。そのような制作方法のアーティストを国際的に探した。
眞弥子はインターネットで出会った最初の外国人アーティストだった。
加藤:今回の眞弥子以外の日本人作家はどのように加わったのか?
眞弥子:日本での展覧会は今回が2回目。前回は愛知と神奈川。今回は銀座、汐留、宝塚。そして札幌。汐留のパークホテル東京で、ホテルで展覧会もされていた高田さんを招待。宝塚では加藤先生のご推薦で、柴田知佳子さん。札幌はwithartの本間真理さんのご紹介で笠見さんに加わってもらった。
加藤:今日はアーティストトーク。それぞれの作家さんに作品について説明してもらう。
笠見:色、形など 直感を用い、作品と対話をしながら描いている。今回はイサムノグチのアカリのオマージュを発表。ノグチが戦時中捕虜になり 厳しい生活を送っていた時、月が唯一の希望だったという。透過性のある和紙にアクリルスプレーを用いた。
高田:大学では日本画を勉強していたが、日本画が好きだからではなく、日本画が扱う岩絵具や紙、箔や墨を使って絵を描くことに興味があった。今は染色用の生地や染料を使用しているが、今回久しぶりに紙を使った。紙でしかできない表現をしたかったのと、コロナの影響でウィルスにも興味が出てきて、専門家の間でも生物か無生物か意見が分かれるウィルスという存在をある種擬人化した作品を描きたかった。
眞弥子:一輪車ダンサー 岡部莉奈さんとのコラボ作品紹介。レジデンス中につくった。床にケント紙を敷き、その上に眞弥子が絵の具を撒き足で描き、梨奈は一輪車で描いた。会場では、ノグチのアカリのように、ぐるっと丸めて飾った。
窓に飾った作品は 来札してすぐにモエレに来た時感じた風を描きたいと思い、レジデンス中に制作。ススキの葉の揺れる様子をコンテで描き、大きなブラシストロークはヨモギの束。
アンドレ:大きな彫刻をつくっていたが、コロナ禍で発表ができなくなり、アニメーションを作るようになった。アニメーションは、自作の彫刻の写真を多視点で映写したものを一枚の支持体(紙に)なぞって重ねていく。今回のレジデンスでも、同様の手法で紙の作品を制作。自分の作品とガラスのピラミッドの内と外を表現。アニメーションの一部の写真からエッチングもつくった。思考はいつも自分自身ではないような。異なったもののように思える。
裏切りの思考と加藤先生の経験。描いた絵が自分のモノでないような・・・
加藤先生:今回はアンドレと眞弥子はレジデンスもしてどうだったか?
アンドレ:2週間なえぼのアートスタジオに滞在制作したが、札幌のアーティストと一緒の建物の中で、眞弥子と仲良く同じ空間をシェアしながら制作した。
眞弥子:東京ではとても小さなアトリエでどうやって大きな作品を描こうか。と いつも考えていたのだが、今回はやっと広いスペースで大きな作品が描ける!となったのに、どうやって大きなスペースを使ったら良いのか、はじめは戸惑った。そのうちに慣れて楽しく描けるようになった。
加藤:身体と空間の関係だね。
加藤:モエレ沼では、どのようなインスピレーションがあったか? どのように作品に反映されたか?
アンドレ:モエレ沼の広大な公園は自分と作品との関連を持たせることができた
眞弥子:下見の際 駐車場の上の丘でサンドイッチを食べたときに吹いていた風。身体に感じた風。丘の下にススキの葉の揺れる光景が身体にも脳裏にも残り、それがインスピレーションとなり、今回の作品が生まれた。
アンドレ:わたしは 要素を構成するときに”直感”を使う。眞弥子は、画面に向かうときに直感的に線を引き、直感に従い絵の具をのせている。
加藤:抽象とは? りんごを描いてもりんごではない?
アンドレ:オランダの16世紀の絵画にも、シンボリックな絵がある。例えば、鳥籠。鳥籠の扉が閉まっている。中に鳥が居る。これは、未婚の象徴。鳥は籠の中。でも、扉が開いている。もうすぐ結婚するという意味。空っぽの鳥籠は既婚。
アンドレ:わたしの住んでいるハーグにはモンドリアンの大規模なコレクションがある。モンドリアンの画風の変遷を見ると抽象化の過程がよくわかる。ワークショップをして感じるのは、抽象画は見る人の力を要求する。子供の方がよくわかる!大人は、何かを期待してしまう。子供は、何も期待せずに観たり描いたりするから。
笠見:ひとつの要素を画面に置く。しばらく見る。また描く。
高田:最近、AIが描く絵にも興味が出てきた。AIが描く絵の目や手は奇形化していて、彼らが人間の手や目をどういう風に認識しているか興味があるし、彼らの描く絵は人間から見ると非常に抽象的に見える。ピエールボナールの風景画もフランシスベーコンの描く絵もAIの描く絵に通じるものを感じる。
アンドレ:アムステルダムの進化生物学者によると 人間の進化をAIが乗っ取ると言っている。人間が18歳になるまでに学ぶことをAIは、2分で覚えてしまう。
加藤:写真が発明されたとき、絵描きは職を失った。AIが絵を描く時代!アーティストのみなさん、職を失うことは怖くない?
笠見:わたしは怖くない。
加藤:でも、使い方だね。だってオランダのメンバーと眞弥子を結んでくれたのは、インターネットだから!笑